GPSログを,Google Earthで表示する

以下では,GPSロガーにより取得したログデータを,GoogleEarth上に表示させます.GPSロガーとして,以下の機種を例として説明します.

SONY GPS UNIT GPS-CS3
このユニットは,電源を入れておけば約15秒に1回,自動的に測定データ(現在時刻と緯度経度情報としての現在位置)を内蔵メモリに記録する機能を備えています.最近ではGPS搭載の3G携帯電話やミニノートPC,デジタルカメラなどが発売されていますが,このGPSユニットは,デジカメ等と直接接続せずに利用するタイプのユニットで,この形式はGPSユニットとしては一般的で単純な仕様です.GPSロガー単体として動作可能なので,他の機器に負担をかけることなく利用でき,ハードウェアを買い替えても継続して利用することが可能です.また,単三電池1本で15時間程度の継続利用が可能です.

最近では,MACに付属している写真管理ソフト(iPhoto)が,緯度経度情報を使って撮影地点を地図上に表示する機能を備えました.表示される地図(google map)を利用した写真の検索や,写真からの撮影位置の検索と地図上への表示など,利用範囲は広がっています.このような処理を行うためには,デジタルカメラにより撮影された画像ファイルに撮影位置の情報が付加されていなければなりません.このGPSユニットは,画像ファイルの撮影時刻とGPSの測位データをマッチングし,画像ファイルに最も近い時刻の位置情報をタグ付けしてくれる機能もついています.

GPSユニットの準備

GPSユニットの電源を長押ししてONにした後,セッティングを行います.
確認する項目はIMEZONEの設定で,日付と時刻はGPSの電波に含まれているので,標準時との時差を設定することが必要です.MENUボタンを押し,上下の矢印キーで「Tools」→「Clock Settings」→「TimeZone」を選択して設定します.グリニッジ標準時との時差を設定するので,日本国内で使う場合は+9:00になります.セットできたらEnterを押し,確定します.

(位置情報と画像データを連携させる場合)デジタルカメラの日時設定確認

GPSロガーを利用して移動情報を捕捉しつつ,デジタルカメラで画像撮影を行うことで,あとでGPSログと撮影画像データを連携させて情報処理を行うことが可能となります.GPSログの位置情報と撮影画像データのマッチングは,GPSユニット内,または,PC上で,撮影日時とログデータを照合することにより行います.具体的には,撮影日時が一致するログデータのGPS情報を,写真に書き加える(タグ(ジオタグ)として付加する)仕組みとなっています.
従って,あらかじめデジタルカメラに内蔵されている日時の設定(日と時刻)が正確に合っていることを確認する必要があります.デジタルカメラの日時設定が違っていると,画像と撮影地点がずれてしまい,数分のずれも地図上では大きな誤差となって表示されます.従って,分単位(できれば秒単位)で正確に合わせておくことが必要です.

GPSユニットの説明

本体の裏側のフタを開けると,SD/SDHCメモリカードとメモリースティック Duo兼用のスロットが搭載されています.これは,撮影が終わった後のメモリカードを差し込むためのもので,ここに撮影画像が含まれたメモリカードを差し込めば,PCを利用せずにログとのマッチングを行うことができ,GPS情報を画像情報に書き込めます.但し,GPSをいったんPCにUSB接続してPCにGPS情報を取り込んでしまうと,GPSユニット内に保存されたGPS情報は消去されてしまいます.このため,GPSユニット内で撮影画像とGPS情報をマッチングするためには,GPSユニットをPCにUSB接続する前に行う必要があります.
電源は単3形乾電池1本を使用します.本体側面には操作ボタンがあり,基本的な設定以外に操作の必要はほとんどありません.
GPS-CS3のデータ形式は NMEA-0183 というデータフォーマットで記録されます.データフォーマットの詳細を知りたい場合はこちらを参照してください.

GPSロガーによる測位データの取得

GPSロガーの電源ボタンを長押しして,電源を入れます.電源は,上空の開けた野外でアンテナ部を上部にした状態でONにするようにしてください.
電源が入り,しばらくすると,液晶画面にGPS測位状態が表示されます.最初は衛星のイラストが表示され,Searchingが長く続きますが,そのまま,GPS衛星の捕捉状態が液晶モニター上に表示され「測位中」になるまで静止して待ちます.初回の待機時間は,測位状態により,2分~5分程度かかります.5分以上待っても測位しない場合は,衛星が位置情報を衛星を捕捉できない場所である可能性があります.その場合は,まず衛星からの位置情報を捕捉できる場所(上空が開けた,空が見えるような場所)に移動して,再トライしてください.


持ち歩き(移動)開始前の最終確認

GPSロガーの表示画面で,現在位置や現在時刻が表示されることを確認します.
測位中にGPSロガーの右側面についているENTERを押すと,画面が遷移し,緯度経度や時刻の情報が表示されます.この時刻情報をもとにデジタルカメラの日時を最終確認します.
GPSロガーが測位中であることが確認できたら,GPSロガー右側面にあるHOLDを上にスライドさせ,HOLD状態にします.HOLD状態にすることにより,持ち歩き中にボタン等が押され,他のモードになるなどして測位中止となる事態を回避できます.
移動中,GPSロガーを落としたり紛失したりしないように注意する必要があります.ケースに入れ,ストラップで首から下げるなどしておけば,落下や紛失の危険がありません.

以上の準備ができたら,持ち歩きをスタートします.

電波が届かない場所

以下のような場所はGPS衛星からの電波が届かず,正しく測位ができないことがあります.
・屋内,建物の中や建物の陰となっているような場所
・高層ビルの間や建物の間の狭い通路
・生い茂った樹木や高架下
・高圧電線など,近くに磁気を発生するものがある場合
・1.5GHz帯の携帯電話など,近くに同じ周波数帯の電波を発生するものがある場合

GPSロガーに記録された測位データと画像ファイルのマッチング,測位データの取り込み

持ち帰りから戻ったら,GPSロガーの電源をOFFにします.ログは電源をOFFにするたびに,異なるログファイルとして記録されます.
測位データをもとに画像ファイルにジオタグを付加する場合は,デジタルカメラからメモリカードを抜き,GPSユニットの裏側のフタを開けて差し込み,Matchingします.


GPSロガーで採取したログをPCに取り込んでからマッチングする場合は,以下の作業を行います.
◆データ処理を行うPCに,「GPS Image Tracker」と「PMB」がインストールされている場合
「GPS Image Tracker」は,GPSユニットに付属していソフトウェアで,マッチングをPC上で行うための機能を備えています.採取できたGPSログは,GPS Image Tracker経由で取り込みます.
GPS Image TrackerとPMBをインストールしてある場合,GPSログは,My Documentsホルダの下に,「GPSMatch」というホルダができており,そこに自動的に取り込まれます.いちど取り込まれたログは,GPS内からは削除されます.

データ処理を行うPCに,GPS Image TrackerとPMBがインストールされていない場合
GPSロガーとPCをケーブルで接続し,直接,ログファイルをPCのHDDの適当なホルダに移動させます.

取り込んだログのKML変換準備:GPSBabelのインストール

ログファイルをKMLファイルに変換し,Google Earth上で扱えるようにします.この変換のために,GPSBabelというフリーソフトを使います.

GPSBabel http://www.gpsbabel.org/index.html


上記サイトで,画面右上の「Downloads」をクリックし,Latest ReleaseのWindows版のGPSBabelをダウンロードします.ソフトウェアはZIPファイルとしてダウンロードされてきますので,これを適当なホルダに保存した上で解凍します.解凍してできたファイルの中の,GPSBabelGUI.exe が,BPSBabelを利用するためのGUIインタフェースです.
1つのログデータだけをKML変換する場合は,この GPSBabelGUI.exeを利用するのが便利です.複数のファイルを一度に処理するケースなどでは,コマンドベースの gpsbabel.exe を使うことができそうです.

取り込んだログのKML変換準備:ログファイルの修正

GPSBabelを利用した変換を行う前に,変換元ファイルとなるGPSログを開きます.ログファイルは,GPS Image TrackerとPMBをインストールしてある場合,My Documentsホルダの下に,GPSMatchというホルダができており,そこに取り込まれています.ホルダ内を検索すると,ログファイルが見つかるはずです.
ログファイルの1行目のデータを,テキストエディタで以下のように修正します.

@Sonygps/ver1.0/wgs-84/gps-cs3.0  ↓修正 @Sonygps/ver1.0/wgs-84 (/gps-cs3の部分を削除)

上の修正を加えたログファイルは,別名をつけて保存し, 元のログファイルとは別のファイルとして保管しておくとよいでしょう.


GPSBabelによるファイル変換の実行

GPSBabelGUI.exe を実行し,GPSBabelのGUIインタフェースを開きます.
「Input」として,「Format」の欄で「NMEA 0183 sentences」を選択します.
「File」の欄で,上で修正を加えたログファイルを選択しておきます.

「Output」として,「Format」の欄で「Google Earth (Keyhole) Markup Language(.kml)」を選択します.
「File」の欄で,適当なKMLファイル名を指定します.
(ファイル名には全角文字(日本語)が入らないようにします.)

上の指定ができたら,「let's go」ボタンを押します.
エラーがなく,KMLファイルを生成できたら成功です.

Google Earthでkmlファイルの表示確認

作成したKMLファイルをダブルクリックすると,Google Earthに取り込まれ,GPSロガーにより採取できたルートが表示されます.

GPS機能を利用した今後のビジネスモデル

これまでGPSは,子供の位置情報の確認などのセキュリティ分野や,車の走行位置確認など地図情報分野での活用が中心でした.今後のGPS機能を利用したビジネスモデルとしては,様々なものが考えられます.特に,携帯電話や携帯端末については,GPSユニットが搭載された機種も増えており,携帯関連のビジネスモデル開発が加速するものと考えられます.
今後の注目分野は,マーケティングのためのGPSの活用です. 顧客の位置情報と路面に位置する店舗の営業情報のマッチングは有力なマーケティング手段となり得ます.位置情報とは関係なく無差別に発信される広告は非効率なものとなっています.ユーザの位置を特定し,一定の商圏に入ってきたユーザ限定で広告を発信することで,効果的なマーケティングが行えます.これにより,店舗の周辺でチラシを配布するのと同様の効果を得られ,更に人によりチラシを配布するよりも効率的です.これまで,フリーペーパーなどを通して行われていたクーポン券の配布も,こうしたGPSとの連動でより大きな効果を発揮するものと考えられます.GPS機能を利用した広告発信で,更に,ユーザの選好を考慮するなど従来の知能情報システムの情報処理技術を組み合わせると,高度なマーケティング活動も可能になると考えられます.
なお,2009年2月,Google Mapsに「Google Latitude」というサービスが追加されました.これは,あらかじめ設定した友人・知人などが公開するGPSに基づく位置情報を地図上に表示して,リアルタイムに位置情報を共有,確認することができるサービスです.iGoogleからこのサービスを利用するには,以下のアドレスへアクセスします.

Google Latitude
公開された位置情報は,以下のようにリアルタイム表示されます.
Latitude

リアルタイムで取得できる位置情報とユーザのPrfile情報を取得して組み合わせることで,個人の年齢や関心を考慮した,ターゲット層を絞り込むかたちでの広告戦略も可能となります.例えば,女性向けのサービスは,商圏に入ってきた女性ユーザにのみ広告を配信するなどの仕組みも実現できます
GPSは時刻情報を含むため,時刻を考慮した広告を組み合わせることも効果的です.例えば,夕方の商店街やスーパーマーケットを中心とする商圏において,主婦層となる30代から60代の女性に向けてその日の特売情報を配信する,といったことが可能となります.これまで,「夕方5時スタートの特売」としていたような販売戦略を効果的に実施することができます.
また,あらかじめ自社で持っているデータベース情報と組み合わせて効果的な仕組みを実現する手法も有効に機能すると考えられます.コンサートのチケットをオンライン購入する顧客については,あらかじめ一定の顧客の選好や購買履歴が自社内に蓄積されています.コンサートの当日,コンサート終了時刻にその顧客がコンサート会場近辺にいることを確認し,顧客の過去の購入履歴から顧客の選好に合った次のコンサート情報を配信し,その場でチケットの対面販売を促進する,といった仕組みも効果的と考えられます.

演習課題